持ち上げる高さと伐倒能力
追い口からの持ち上げる高さ
持ち上げる高さとは、木が自然に倒れるまで、伐倒ツールが追い口を押し開く必要がある距離のことです。次の図は、さまざまな直径の木で必要になる持ち上げる高さ(チェンソーでの切削を含む)を示しています。これらの値は、北欧の樹種および幹の形態に当てはまるものです。厳密な数値ではないため、目安として参照してください。この図を使用すると、例えば、伐倒に必要なクサビの個数(高さ)を確認できます。
伐倒力(木の倒れる力)
伐倒ツールは、木を倒すために必要な力を発揮しなければなりません。つるの旋回軸までの距離を乗じた力は、伐倒力と呼ばれています。伐倒を計画している木に必要な伐倒力は、選択するべきツールが決定されます。この図は、伐倒力を推定し、複雑な伐倒作業を行うための正しい伐倒ツールの選択に役立ちます。これらの値は、北欧の樹種および幹の形態に当てはまるものです。厳密な数値ではないため、目安として参照してください。
この数値は、健全な木々と穏やかな天候という条件下での、プロの林業家向けの最大値を示しています。このグラフは、つるが適切な厚さで、受け口の深さが幹の直径の約 20% であることを前提としています。伐倒ツールを選択する際は、樹冠が非対称である可能性、幹の曲がり、風、および枝上の雪の重量も考慮する必要があります。この図は、ダーラナ大学(スウェーデン)の森林研究者 Tomas Gullberg 氏によって作成されたものです。
図の使用方法
1.3 m の高さで木の直径(DBH、胸高直径)を測定します。キャリパーを使用するか、伐採者のメジャーテープを使用して外周を測定します。正確な直径は、外周を 3.14 で除することで得られます。
図の X 軸で DBH を基準とします。該当の傾きのグレーの曲線に当たるまで、まっすぐ上方に進みます。
左にまっすぐ進みます。Y 軸の伐倒力を読み取ります。
読み取り値よりも高い伐倒力を発揮するツールを選択します。
例: 45 cm の DBH をもつ木を後方に 1 m 傾けるには、1,400 daNm の伐倒力が必要です。大型のブレイキングバーは、1,200 daNm を若干超える程度の伐倒力であるため不十分です。大型クサビは、約 1500 daNm の伐倒力を発揮するため十分です。約 2,600 daNm の伐倒力を発揮する 2 個の大型クサビの使用が適切です。
各種の伐倒ツールによる伐倒力と持ち上げる高さ

手の力
後方に傾いていない極めて小さな木にのみ有効です。伐倒力は限られたものになります。5 m のポールを使用して地面から押仕上げることで、てこの作用により伐倒力を大幅に高めることができます。最大持ち上げ高さ:制限なし。

ブレイキングバー
各種のハンドル長さが用意されており、さまざまな伐倒力を発揮します。作業者が対応できない持ち上げる高さが必要になる場合があるため、極めて大きな木、後方に大きく傾いた木には、ロングハンドルのブレイキングバーを使用しないでください。最大の持ち上げる高さ:約 2 cm。

伐採クサビ
大径木には極めて大きな伐倒力を発揮しますが、小径木の場合はてこの作用が小さいため、あまり伐倒力が発揮されません。困難な伐倒では、まず幅方向に沿ってクサビを打ち込んでから、高さ方向に多くのクサビを打ち込む必要があります。
※日本の法令では高さ方向にクサビを増やすこと(重ね打ち)は禁止されています。最大の持ち上げる高さ:クサビ 1 個当たり約 3 cm

ツリージャッキ
幹に押し付ける機械式ジャッキの一種です。高い伐倒力を発揮するため、中径の複雑な木々を処理する、大規模な伐倒作業に適しています。最大の持ち上げる高さ:制限なし。

ウインチとロープ
特定の方向に伐倒するための最も安全な方法です。大径木にも小径木にも使えます。伐倒力は、ウインチのけん引力と固定ポイントの高さの両方によって変化します。ウインチを幹の 5 m の高さに固定して、5000 N で引っ張ると、25,000 Nm の伐倒力が発生します。最大の持ち上げる高さ:制限なし。
つるに影響する要因
高度な伐倒作業では、つるに通常の伐倒よりも大きな応力がかかる場合があります。伐採クサビを使用する場合、つるに、木目に沿った応力と、木目と交差する応力の両方がかかります。伐倒方向の制御を維持するには、伐倒作業全体を通してつるが損傷しない状態を保つ必要があります。このため、さまざまな樹種の特性も考慮する必要があります。冬期は木の凍結により柔軟性が低下し、より早く損傷することに留意してください。また、腐朽木は健全な木よりも弱くなっています。